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隠し湯生活

 風呂無しアパートと風呂ありアパートの家賃の格差はかなり大きいですよね。でも、家賃をケチって風呂なしアパートに住んでも、銭湯代も年々値上がり気味。これらの問題を一気に解決するには…
「風呂なしアパートに風呂を作ってしまえば良い」
ってことで、作ったのがこれ。風呂と言っても自作の簡易シャワールームみたいなものです。大家さんには内緒なので「隠し湯」って事になっています。

 このアパートには6年ほど住んでいましたが、その後郊外の古い借家に引っ越しました。しかし、その借家も何故か前の住民が浴槽を持って出て行ったので、しばらく隠し湯が活躍…その後、ゴミ捨て場で浴槽を状態のよい浴槽を拾ったので、今ではまがいなりにも「風呂持ち」になっております。

 一番風呂
 THE FIRST BATH
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 家賃の高いこの東京23区内で如何に安く生活するか?手っ取り早い答えは
「風呂無しアパートに住めばいい」
って事になるでしょう。同じ間取りで風呂ありと風呂無しでは2万円前後の価格差がありますから。しかし、これには問題が残ります。それは
「毎日の風呂代が結構かかる」
ってことです。東京都の風呂代は400円(2003年5月現在)で、2日に1度に入ったとしても6000円もの出費…だが、これはちょっとした工夫と技術で解決できました。それは
「アパートに風呂を付ければいい」
です。でも、普通の風呂を付けるお金もなければスペースもない。どうした物か…と考えた結果完成したのがこの隠し湯です。
 風呂といっても正確に言えば簡易シャワールーム。ベースは近所のD.I.Y屋の隅に置いてあったプラ舟(コンクリートかき混ぜ用の角桶・約4500円)の周りを行楽用シートで覆うというモノ。お湯は流しの湯沸かし器から供給され、部屋の隅にある洗濯機用排水溝から排水されます。湯船を支えるゲタは近所の建設現場からタダでもらってきたモノを組み合わせてます。しめて9000円程度で完成しました。1997年から使い初めていますから、すでに元はとっているでしょう。
 これを見て「台所が使えない」と思われるでしょうが、そこは安心。夜逃げのリヤカーに使用されたアングルで作った棚の下に収納されるのです。これにより、3畳程度の台所に冷蔵庫・洗濯機・風呂の3つが楽々置くことができます。「湯船にゆったりつかりたい」という人には不向きですが、「身体を清潔に保ちたい」程度ならこれで十分です。
 マネする人はいないと思いますが、制作、使用する上で若干の注意点があります。
  • 部屋に洗濯機用の排水溝が無いとダメ
  • 給湯器の連続使用は危険
  • お湯の出口を給湯器よりも高い位置にしない
 この風呂では排水を効率よく行うために、風呂桶には右図のようなゲタを履かせて水位を高くしています。まがいなりにも、プラスチックの容器にお湯を注ぐわけですから、ゲタの骨組みも、湯船へかかる力が分散するように、Hの字型になっています。斜めに組めればもっと良いのでしょうが、材料の関係上しかたなくこうなっています。

 二番風呂
 THE SECOND BATH
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 以前は隠し湯の周りは行楽用ビニールシートで覆っていただけでしたが、排水の邪魔になり、湯船(?)の汚れの原因になっていました。それで、ちょいと改良を加えて、プラスチックダンボールパネルで折り畳みの囲いをつけてみました。
 棚の下に収納するために、縦を1m以内にしなければならない、という制限があったので、あんまり高くは作れませんでしたが、どっちみち座って使う物なのでこれで充分です。折り畳めば、蓋にもなります。

 このプラスチックダンボールには色々とお世話になってます。引っ越し屋さんでバイトしていたときは、コイツのことを「ヨウジョウ」とかって呼んで、搬入する物が壁に当たって傷が付くのを防ぐためのクッションに使ってましが、工作の材料として見れば加工もしやすいし、濡れても大丈夫なので、利用範囲が結構広いはず。ちょい高いけど丈夫な段ボールだって思えばいいですかね。

 三番風呂
 THE THIRD BATH
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 前回の二番風呂へのバージョンアップから約2年が経ち、ダンボールパネルの汚れが目立つようになったので、新しく作り直しました。二番風呂との変更点は以下の通りです。
  1. カバー範囲が4割アップ
    中央から右側に広がりました。所々に付いている耳の様な部分はカバーを桶の枠に引っかけて固定する為に付いています
  2. 折り畳み方を変更
    カバー側面(幅90cm)を中に折り込むことによって、収納時の大きさはそのままです。ネジがステンレス製に変わっています。














←参考までに内部はこんな感じ。
 左下の穴が排水溝です。

 製作時の注意
 CAUTION!

真似する人は居ないだろうと思ってましたが、最近この「隠し湯」の制作方法についての問い合わせメールがあったので、追記しておきます。
■使用したプラ舟の大きさは?
外寸でおよそ
 100×70×22cm
でした。郊外のホームセンターでは普通に手に入りますが、都心部のホームセンターでは入手は困難かもしれません。自分の体格や部屋の広さにあわせて大きさを決めるのが良いでしょう。


■排水口の構造について

流し台の下に使う蛇腹パイプの排水パーツを流用してます。このパーツには色々種類があるようなので、排水口と蛇腹パイプのサイズ等で間違わないように注意して下さい。
プラ舟の隅に穴を開けて排水口パーツを取り付けることになりますが、φ30mm以上の穴を開ける必要があります。そんな穴を開ける為には贅沢を言えばホルソーが必要になりますが、普通の家にンな物があるわけありませんから、一番大きなドリルビットで穴を開けた後で半丸ヤスリで穴を広げるのが良いでしょう。リーマーで穴を広げるのも良いでしょうが、大き目のリーマーが必要になります。
 排水口パーツにはゴムパッキンが付いていますが、私は念のため風呂・流し用のコーキング材をぐるっと塗っておきました。これで6年間水漏れはありませんでしたが…きっちり作っていたからなのか、ただ単に運が良かっただけなのか、どちらなのかは不明です。


■お湯の出口を給湯器よりも高い位置にしない理由

これは私も確信が持てないのですが「構造上避けた方が良いかな?」と思ったので書いている物なので、もしかしたら取り越し苦労かもしれません。
台所に壁掛け式で取り付け、湯沸し器に水を流し込む側に蛇口があるいわゆる「元止め式瞬間湯沸かし器」の場合、お湯の出る口側にはお湯を止める蛇口をつけてはいけないことになっています。もしつけてしまったら急に蛇口を閉めたら、熱で膨張したお湯&水蒸気の逃げ場が無くなって湯沸し器が壊れる危険があります。ですから手元で水が止められるタイプのシャワーを取り付けないほうが良いです。
 これに加えて、お湯の出る口の先に長いホースなどを取り付けてはいけない事になっています。長いホースをつけると長い分だけ圧力が余計に必要になるので、あまりに長すぎると相当圧力が必要になります…これは上記のお湯の出る口側に蛇口をつけて止めたのと近い状態になるので、これまた湯沸し器が壊れるわけで。ま、これは数十メートルのホースをつけないかぎり大丈夫だとは思いますから、ホースを短くしていれば大丈夫でしょう。
 今現在の茨城の借家では3m弱のホースを接続していますが、今のところ問題は無いようです…途中でかなり冷めてしまうのが難点ですが。
 しかし、たとえホースが短くても、給湯器よりもずーっと高いところにシャワー口を 持ってきた場合、その高さ分の圧力が必要になるので、長いホースをつけたのと同じ状態 になり、これまた湯沸かし器が壊れる可能性が出てきます。
→よって  ※「お湯の出口を給湯器よりも高い位置にしない」 と結論付けたわけです。杞憂な気もしますが、日常的に想定外の使い方をし続けるわけですから気をつけるに越した事は無いでしょう。
 事故が起こっても、私は一切責任を取りません!


■瞬間湯沸かし器の設置について

 瞬間湯沸かし器のついていない部屋では、新たに設置しなければならなくなりますが、ガス器機の設置には資格が必要なので素人が勝手に設置してはいけません。業者に頼みましょう。



…というのがタテマエですが、ある程度知識と工具と技能があれば、自分でホームセンターで売っている瞬間湯沸かし器を買ってきて設置が可能です。実際、ホームセンターで湯沸かし器を購入した際に設置工事を頼もうとしたら「小型の瞬間湯沸かし器の設置工事はしてません」と言われてしまいました…ま、そのホームセンターだけそうなのかもしれませんが。あと、最近の法律改正で瞬間湯沸かし器などの据え置き型ガス器機をゴムホースで接続してはいけない事になり、売っている湯沸かし器のホース接続パーツの形状がゴムホースが取り付けられない様になってますが、ホームセンターでは、湯沸かし器のすぐ横にゴムホース用の変換コネクタとゴムホースが売られているのが現状です。
 ま、この辺りは自己責任の範疇…何度も言いますが勝手に設置して事故が起こっても当方は一切責任持ちません。



■ま、とにかく…

 そんなこんなで、一歩間違えば他人に迷惑をかけるどころか他人の命を危険にさらす事になりかねません。ここではあくまで「隠し湯」を「紹介」しているだけで「推奨」している訳ではありません。
 私の場合、本当に貧乏って訳ではなく、モノ作りの為に工具や材料を購入するお金が必要なので、普段の生活で節約しているだけです…多分。そう言う下地が無い人は絶対に真似しないでください。

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